底つき体験について思うこと
底つき体験って言葉があります。今回は、このことについて、書きます。
底つき体験の意味
改めて、説明しろと言われると、どう言えばいいのか、言葉に迷うので、ちょっとググります。
検索で一番上に引っかかった厚生労働省のページにこんなのがありました。
依存症の回復のためには依存症者本人が「どうしても飲んでいるわけにはいかなくなった」という感覚(底つき体験)をもつことが必要であり、そうなって初めて酒をやめて回復したいと思うのですが、こうした状態となるためには、イネイブラーがイネイブリングをやめ、援助のルートが絶たれる必要があります。
引用元
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-056.html
要は、「どうしようもなくなった」って状態になることです。
でも、このことは誤解しがちです。
その結果が、なんと家族が「底つき体験をさせる」とか言ったりします。
Nouti的には、結構重要なので、もう一度書きます。
「底つき体験をさせる」です。
言葉は違えど、「底つき体験につなげる」とか、「これで底つき体験になる」とか、そういうのを家族が言うのも同じです。
この発想、結構危険です。
何がかというと、完全に支配しているんですね。相手を。
底つき体験というのは、本人が「どうしようもなくなった」となることです。何も、誰かが「どうしようもなくなったと、本人に感じさせる」ことじゃありません。
「結局、本人が感じるんだから、同じじゃん!?」と思うとそこに罠があります。
一言断言できるのは、
もし、相手に「底つき体験」をさせようとしているなら、相手は底つき体験をしません。
「底つき体験をさせる」のイメージ
こんなイメージです。
後ろに50メートルの深さの穴があります。
あなたは相手の手を引っ張って、「さあ、落ちれ、さあ、落ちれ」と言います。当然、相手は抵抗します。むちゃくちゃ抵抗するんです。誰だって落ちたくありません。死んでしまうかもしれないからです。怖いんです。
でも、それが「底つきになる」と信じて疑わないあなたは、ぐいぐい手を引っ張って、「さあ、さあ」と招きます。
で、ここがポイントです。
仮に相手が穴に落ちたとします。激痛です。苦しいです。這い上がれません。そして、相手は「助けて!」と言います。
あなたは、「やったー、認めた」と思い、病院に連れて行きます。もしくはAAに行かせます。
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これが底つき体験をさせようとしている人の行為です。
はっきり言って、残酷ですね。したい気持ちはわかります。何を隠そう、Noutiもしました。でも、これって、本当に、本当に、本当に、意味がないんです。
確かに相手は、痛みを受け、病院に行くかもしれません。
そして、アルコール依存症を認めるかもしれません。
でも!?
「あなたに突き落とされた!」と言う、とてつもなく大きな傷を持つことになってしまったんです。
3ヶ月、断酒するかもしれません。
半年頑張るかもしれません。
でも、「あなたに突き落とされた!」という恐怖心と、失った信頼はちょっとやそっとで回復できるものではありません。
孤独で、自責で、惨めで、飲んでいないとやってられない人生の中で、更に「突き落とされた」んです。
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相手がアルコールに戻ってくるのは、ただの時間の問題でしょう。
底つきは体験は依存症者だけじゃない
「底つき体験をさせる」なんて考え方は、畑違いです。そんなことに注力してはいけません。
そんな悪魔みたいな考えはきっぱり捨てないといけません。
何も家族は、「底つき体験をさせる」んじゃないんです。
「底つき体験」というものを理解するんです。
つまり、この病気は、本人が心の底から、「もう無理だ!」となって初めて、回復が期待できる病気であることを理解するんです。
自分の無力を認めるんです。
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家族も、依存症者と同じように「底つき体験」が必要なんです。
家族の「底つき体験」があって、もう生きていられなくて、離婚して、別居して、自殺未遂して、そこで、本人も「底つき体験」して、アルコール依存症を回復したというケースは多々あります。
でも、決して、家族が離婚や別居をして、「底つき体験をさせた」わけじゃないんですね。
「さあ、これをきっかけに底つき体験をさせよう」なんてうまくいきません。
家族ももうダメだったんです。もうどうしようもなくなったんです。
だからそんなこそこそと、相手に「底つき体験をさせる」なんて悠長なことを考えられる状況じゃないほどに、追い込まれたんです。
「底つき体験」は決して、アルコール依存症本人のものではありません。家族のものでもあります。
「底つき体験をさせる」ことは絶対にないです。
人はそれぞれが、自分で「底つき体験をする」んです。
Noutiは「底つき体験」しました。夫のじゃないです。自分のです。
この命が今あること感謝しています。
「底つき体験をさせる」なんて考えを頭から捨て去ってください。
大丈夫、出口のないトンネルは決してないことを覚えておいてください。