一瞬で反応しない技術

アルコール依存症者の家族が学ばないといけないことの一つに、

一瞬で反応しない技術があると思います。

これは言い換えれば、

テンポを緩める技術
大げさに考えない技術
向き合わない技術
真剣にならない技術
深刻にならない技術

と同じようなものです。

アルコール依存症は、アルコールに依存している病気です。
そして、脳が、正常に働かなくなります。

家族は、アルコールに依存していないから、
普通に脳が正常に働きます。

家族がよく理解しないといけないことは、
脳が正常に働く人が、脳が正常に働かない状態の時の人と、
共存しているって事実です。

だから、普通に考えて、
アルコール依存症者がいきなりキレ出して、
そのことに対して、
一瞬で反応していたら、おかしいんです。

これは、つまり、
脳が正常に働かない状態の言動に対し、
まともに脳を正常に働かせて、対応しています。

そうすると、おかしくなるのは当たり前。
疲れるのは当たり前です。

だから、一瞬で反応しちゃダメなんです。

一瞬で反応することって、大抵、正常に働く脳が、
正常に反応してくれることをシグナルで出してきます。

おい、相手、怒ったぞ！
お前のこと馬鹿にしたぞ！
クソ扱いしたぞ！
いいのか、攻撃せよ！

これが脳が出してくる命令です。

だって、人間には常に自己防衛本能があるから。

で、これにいつも従って、

そうだ！脳！ありがとう！
君の指令に従う！
よし、攻撃開始！

って、アルコール依存症にまともにキレ返したら、
もう起きることは想像つくと思います。

こういう不毛な喧嘩を何度も何度も、
繰り返している人もいると思います。

Noutiもそうでした。

脳は、いつも一瞬で自分を守ってくれるから、
その一瞬の守りに、一瞬で答えちゃダメなんです。

その代わりに、
ただ受け流す〜
できるならジョークで返すくらいの余裕で。

向こうも、正常じゃない脳で、やっていることだから、
時間が経てば、すぐ怒りも冷めてきます。

俺、何やってるんだろうってなってきます。

だから、家族は不要に盛り上げちゃダメなんです。

確かに、ムカつくかもしれません。
イラっとするかもしれません。

でも、一瞬で反応しないんです。

堪えるとか、耐えるとか、我慢する、とかそういう話でもないです。

もう、相手にもしない感じです。

無視ともまた違います。

ちゃんと聞いてるんです。

言っていることには反応します。でも、怒りには対応しないんです。ビビらないんです。

淡々となすべきことをし、淡々と時計を前に進めます。

アルコール依存症の衝動的な行動に対する対処は、
時間しか解決してくれません。

一度沸騰したものも、放置していれば、冷めていきます。

そこにいきなり氷を入れよう！とか、火を投げ込んでやる！とか、
色々しなくていいんですね。

ただ、一瞬で反応しない。

それだけで、毎日がずいぶん穏やかで、平和になります。